都窯業株式会社

〒530-0047 大阪市北区西天満2丁目8番地1号 大江ビル Tel. 06-6367-0389 Fax. 06-6367-5567
工房:三重県伊賀市西山 伊州窯

ストックホルム市庁舎(スウェーデン)

世界の名建築とレンガ3
[スウェーデン・ストックホルム編]

ストックホルム市庁舎

(1909 - 1923年)

設計:ラグナル・エストベリ



軸線の僅かに振られたストックホルム市庁舎の平面図は、見るほどに不思議な歪みをもたされている。ほぼ正形の中庭は、実は四辺とも平行ではない。
― 中略 ―

当初裁判所として提案された計画案は、六回にわたる変更修正の後に、市庁舎として用途変更されたという。更に市庁舎であることが決まってから、落成までの一○年以上にわたる期間は変更修正の歴史であった。
一九○九年の初頭におけるスケッチには、古典的で厳格な空間構成がとられていた。それがいま目にすることが出来るものになるまでには、意図的なひずみをもち込み、シンメトリーを崩し、柔らかな構えをとらせるまでの、長い練りこみの密度が籠められている。
建築がレンガによって積まれたのと同じように、彼は夢想の断片を丹念に積み上げた。紆余曲折に満ちた二○年以上に及ぶ長い年月は、強靭な創造意欲によって、考え抜く時間の長さに置き換えられた。

めまぐるしい変転をくり返す現代において、時の長さに沈潜する”ものの重さ”は、次第に忘れ去られようとしている。
瞬時に消え去るものと、長く状態を保つもののあいだに、どちらが貴重かという論議はあり得ない。しかし建築が生まれ落成に到るまでの、創る者の目と行動の執着力は、いつの時代にも欠かすことの出来ない姿である。ストックホルム市庁舎は、その証を、低い太陽光を乱反射するメーラレン湖のほとりに落とし続けている。